研修医コラム③

プロフェッショナリズムを学びはじめた一年

令和8年3月執筆

 臨床研修医として一年間働き、実際の医療現場では、知識や技術だけでは不十分であることを次第に実感するようになった。患者や医療スタッフとの関わり、責任ある行動、誠実な態度といった「プロフェッショナリズム」が、医師として強く求められていることを日々の診療の中で学んできた。

検査の意味を考えるということ

 医師として働き始めた頃は、与えられた業務をこなすことで精一杯であり、患者と十分に向き合えていなかった。当直中、指導医から検査一つひとつについて理由を説明できなければ許可してもらえないことがあった。初めは面倒に感じたが、振り返ると、指導医は常に患者に真摯に向き合っていたのだと気づき、驚かされた。救急外来のような忙しい環境では、まず検査を行うという姿勢になりがちである。しかし指導医は、検査や治療が患者に与える負担まで考えて判断していた。その責任感と優しさに触れ、この経験は自分の未熟さを強く自覚すると同時に、医師としての姿勢を見直す契機となった。

「相談する力」も責任である

 総合診療科研修では、自分で考える力の不足を痛感した。多様な主訴を持つ入院患者を前に、治療方針を十分に整理できず、判断に迷うたびに指導医へ相談していた。当初は自立して診療を進められないことに焦りや苛立ちを感じていたが、指導医から「相談すること自体が患者の安全を守る行動である」と助言を受けた。それ以降、単に答えを求めるのではなく、自分なりの考えや治療方針を整理したうえで相談するよう意識した。その結果、診療過程を言語化する習慣が身につき、徐々に臨床推論を主体的に考えられるようになった。一人ですべてを判断するのではなく、自己の限界を認識し、適切なタイミングで助けを求めることも医師の責任であると理解するようになった。

患者と家族に寄り添う医療

 診療を通して、患者や家族とともに病気に向き合う姿勢の重要性も学んだ。ある患者のICの場面で、家族は医学的な治療方針については理解されていたものの、今後の生活や予後に強い不安を抱えていた。指導医は患者本人だけでなく家族の思いにも丁寧に耳を傾け、共に治療の方向性を考えていた。その姿を見て、医療とは病気を治す行為にとどまらず、人生に寄り添う営みでもあると実感した。医師とは、患者や家族と同じ目線で困難に向き合い、共に歩む存在であるべきだと考えるようになった。

チーム医療の中で学んだこと

 チーム医療の経験も、プロフェッショナリズムへの理解を深める契機となった。働き始めた当初は医師としての判断に意識が集中し、多職種の意見を十分に活かせていなかった。しかし看護師やリハビリスタッフからの情報によって患者の状態変化に早期に気づけた経験があり、医療は個人ではなくチームによって支えられていることを実感した。自分の力には限界があることを認識し、必要な場面で相談し協力する姿勢こそが、患者にとって最善の医療につながると理解するようになった。

振り返りが成長をつくる

 一年を通して、日々の診療を振り返る自己研鑽の重要性も強く感じた。忙しい業務の中では目の前の仕事をこなすことに意識が向きがちである。しかし、うまくいかなかった対応や迷った判断を振り返ることが、次の診療に活かせる学びになると気づいた。失敗から学ぶ積み重ねが、同様の状況に直面した際の迅速な対応につながっている。

これからの医師像

 一年間の研修を通して、医師としての成長とは単に知識や技術を身につけることではなく、患者や医療チームに対して誠実に向き合い続ける姿勢そのものであると学んだ。患者から信頼される医師となれるよう、これからも学び続け、日々の診療に真摯に向き合っていきたい。