放射線治療について

放射線治療とは

「放射線」は目に見えず、体にあたっても何も感じませんが、腫瘍の治療に効果があります。放射線の照射には痛みを伴わないので、麻酔をかける必要もありません。
放射線治療は、目に見えない放射線を目に見えるように再現ができるコンピュータを使い、患者さんのさまざまな画像・検査データをもとにして、実際の患者さんに対する一連のシミュレーション(治療計画)をするところから始まります。綿密な治療計画に精度の高い治療装置を用いることで、正常組織を避け正確に放射線をあてることができます。
放射線治療では、放射線の特殊な性質を利用して、体の奥にある腫瘍に対しても効果をもたらします。これにより体の一部を切除することなく治療を行うことが可能となります。

目的

放射線治療にはこのような目的があります。

根治治療放射線治療によりがんを完全に治すことを目的としています。
緩和治療苦痛などの症状を和らげます。
術前治療手術の前に腫瘍を小さくすることを目的としています。
術後照射手術後に残っている可能性のあるがん細胞を根絶するために行います。
化学放射線治療抗がん剤の投与と一緒に照射することで効果を高めています。

放射線治療の流れ

治療の方法について

放射線治療は、「診察」「治療計画」「検証作業」「放射線治療」「経過観察」の流れで行っていきます。

1. 診察放射線治療医が診察し、どの部位にどのくらいの放射線を照射するかを決めます。
2. 治療計画用CT撮影治療計画CTを撮影し、放射線のエネルギー・放射線を当てる方向・照射範囲などを決める元になる画像を撮影します。
3. 放射線治療計画治療計画CT画像をもとにして実際に照射する方向などを決定します。
4. 検証作業治療計画時と照射時の患者さんの位置誤差を補正して放射線を照射します。
5. 放射線治療治療計画に基づいて、放射線を照射します。部位によって、照射する回数が異なります。
6. 経過観察放射線治療が終わった後も、定期的に診察を受けていただきます。

1. 診察

放射線治療医が患者さんを診察し、CTやMRIなど様々な検査結果を参考にして治療方針を立て、放射線を当てる場所・放射線の量等を決定します。
診察は、放射線治療科で行ないます。診察の後に、治療計画のためにCTを撮影します(CTシミュレーション)。

2. 治療計画

① CTシミュレーション

照射する放射線のエネルギーや方向や照射範囲などを決めるために治療計画を行います。治療計画には治療計画用CTを撮影します。
放射線治療は、決められた範囲に決められた量の放射線を照射しなければならないので、毎回同じ姿勢で行わなければなりません。そのために、体の一部を固定するための道具を使用します。頭部の照射には、写真のような固定具を作ります。固定具は照射する部位によって異なります。治療計画CTの撮影時の姿勢で毎回治療をしていきますので、できるだけ無理が無いリラックスした姿勢で寝ていただきます。

② 3次元治療計画装置

治療計画では最終的に、3次元治療計画装置というものを用いて、治療計画CTの画像をもとにコンピュータ上に仮想の患者さんを作成し、腫瘍に対する放射線の集まり具合を調整します。

3. 検証作業

3次元治療計画装置で作成した治療計画通りに放射線治療装置から放射線が照射されているかを放射線測定器を用いて調べます。
また、2種類の3次元計画装置を用いて放射線量の確認をしています。

4. 放射線治療

放射線治療装置の寝台に寝ていただき、目印としての「しるし」や、治療装置で撮影したCT画像等をもとにして、体の場所を合わせます。このとき身体に力がはいっていると、治療計画時と同じ場所に体を再現できないので、リラックスして技師の指示に従っていただきます。体の場所を合わせてから、治療計画装置で決定した量の放射線を照射します。

初回は、治療装置でCTを撮り、体の場所を合わせて確認作業をするので少し時間がかかりますが、それ以降は1回10分くらいで治療は終わります。ただし、定位放射線治療や強度変調放射線治療などは、高精度な治療のため30分~1時間くらいかかります。
放射線の照射中は、体が痛くなったり熱くなることはありません。照射中に体が動いてしまうと、腫瘍だけでなく正常な組織にも放射線があたるので動くことができません。照射中は、患者さん1人だけになりますが、担当技師がモニタで観察しているので心配いりません。
治療期間中は、週2回(月曜・木曜)に診察をします。放射線治療は、適切な回数と期間行わないと効果があらわれません。勝手に休んだり、やめたりすることはできません。

5. 経過観察

放射線治療終了後も放射線治療医による定期検診が行われます。その後は依頼医の診療科もしくは依頼元の病院の診察を受けます。

当院の治療装置について

第2リニアック室

当院では高精度放射線治療を実施できる2台のリニアックが稼動しており、第1、第2リニアック室には、ELEKTA社製VERSA HDが導入されています。当院では、最新の治療として定位放射線治療、強度変調放射線治療(IMRT・VMAT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、呼吸性移動対策、体表面光学式位置照合システム等の最新の技術を提供できるように充実したシステムを有しております。

出力評価を受けています

放射線治療装置については、第三者機関(財団法人 医用原子力技術研究振興財団)より、出力線量の評価を受けています。

放射線治療装置の出力線量評価に関して、昨年、患者さんに確固たる責任を持ち放射線治療を行う為に、新潟県内でいち早く、国立がんセンターがん対策情報センターの「放射線治療機器の出力測定支援プログラム」の開始に併せ、第三者機関(財団法人 医用原子力技術研究振興財団)に放射線治療照射装置の出力線量測定を依頼し、この度適正な線量である旨の報告書を受理しました。
放射線というのは目に見えません。我々放射線治療に携わる技師にとって測定結果が全てです。その測定結果から放射線治療計画を決定する為、日ごと放射線治療測定技術の向上に努めなければなりません。この報告書を受理したことにより新潟県立中央病院の放射線治療に、より自身と患者さんへの安心を提供し「がん診療連携拠点病院」として放射線治療装置の品質管理を確固たる物とし今後も放射線治療の技術の向上に努めます。