研修医コラム⑤

顕微鏡と病棟のあいだで

令和8年3月執筆

 当院研修医の研修後の進路は非常に多様である。内科系、外科系、所謂マイナー科、いずれにもバランスよく進んでいる。これはほとんどの科が揃っており、どの科でも充実した研修ができることの表れだろう。また、自由選択期間が非常に長く、もう一度回りたいと思った科を何ヶ月でも回ることができる。進路を迷っている人も、決めている人も、やり方によって如何様にも出来る。
 私はそのバランスの良さと自由度に惹かれて当院での研修を希望した。私は学生の頃から血液内科か病理に進みたいと考えており、両科で研修医として研修してから最終決定したいと考えていたからだ。
 公の病院コラムに掲載いただくには個人的な話になるが、私は医学部入学前から細胞、特に血液細胞や免疫細胞に興味があり、顕微鏡を使うのも好きだった。医学部に入った動機も、免疫学への興味であった。医学部に入ってからは血液内科と病理診断科に興味を持ち、将来はいずれかの医師になりたいと考えるようになった。
 しかし、進路を決定する上で、両者の大きな違いを意識せざるを得なくなった。臨床医か、診断医かだ。自分は本当に臨床医ができるのか、あるいは臨床に立たずに顕微鏡や検体と向き合う毎日が送れるのか。きっと研修してみれば、消去法的でもどちらかに気持ちが傾くだろうと楽観的に考えていた。
 このコラムを書いているのは研修医一年目の3月。どちらもの科で研修させていただいた。
 困ったことに、結論は出なかった。
 本当に困っている。どっちもやりたい。臨床が想定していたより楽しく、検査所見と治療が密接に結びつくのも楽しい。一日中顕微鏡と向き合うのも非常に楽しい。先生方も良い先生方ばかりだ。細胞可愛い。体が2つあるなら、どちらの科も選んでいただろう。
 正直なところ、現在の1番の関心は血液病理であり、単純な興味だけで言えば病理に進みたい気持ちの方がやや強いような気もする。しかし、先ほどの臨床医か診断医かという点や、将来的な見通しの透明度など、様々な迷う理由がある。臨床医から病理医へ転向された先生は多くいらっしゃるが、病理から臨床というのは現実的に難しいだろう。加えて、血液病理を学ぶことができる医局はそこまで多いわけではなく、病理に進むとしたら私はどこでどのように働くことになるのだろうか、という不安もある。そもそも自分はアカデミア中心の世界でやっていけるのだろうか。
 血液内科に行くのだとしたら、自分は本当に臨床医をやれるのだろうか。先に述べた通り、志望動機は細胞への興味であり、人を助けたいと熱意を持って尽力する先生方のようにはなれないのではないか。病棟業務、外来業務、当直と目まぐるしく回る日常の中でやっていけるのか。おそらく血液内科を選んだら、病理への未練はたらたらになるだろう。それで本当にいいのだろうか。
 どちらにも行きたいからこそ、どうにかマイナスな面を挙げて消去法的に選ぼうとしている思考が出てきてしまい、少し嫌な気持ちになる。サイコロでも振って決めてしまいたい。
 研修医2年目で、再度どちらもの科で研修させていただく予定である。そこで進路決定したいが、おそらく今と同じようなことを考え続けてすっきりと結論は出せないだろう。自分の進路を好きに悩むことができるのは本当に幸福なことであるとは思っているものの、今日も悩みが尽きない。どうしたらいいか、誰か教えてください。