身体的拘束最小化のための指針

2025年3月作成
2026年5月改訂
2026年6月改訂

身体的拘束最小化に関する考え方

 身体拘束は、患者の行動の自由を制限する行為であり、身体的・精神的苦痛を与え、QOLの低下を招き、人間としての尊厳を大きく損なうものである。当院では患者様の尊厳を尊重し、身体拘束を行わないケアを基本とする。患者の安全確保を理由とする場合でも、先ずは拘束以外の代替手段を検討する。やむを得ず身体拘束を実施する際は、切迫性・非代替性・一時性の3要素を満たす場合に限る。実施中は定期的な観察と評価を行い、速やかな解除を目指す。また、多職種で情報共有し、身体拘束の発生要因を分析しながら再発防止に取り組む。職員への教育・研修を継続的に実施し、身体拘束のない安全で安心な療養・生活環境の提供を推進する。

身体的拘束最小化のための基本方針

1)身体拘束の原則禁止
 患者本人または他の患者などの生命または身体を保護することを目的とした場合以外は原則身体拘束を行ってはならない。
 
2)やむを得ず身体拘束を行う場合の要件
 次の3要件を全て満たした場合に限り必要最低限の身体拘束を行うことができる。
①切迫性:
 患者本人または他者の生命・身体に危険が切迫している場合
②非代替性:
 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がない場合
③一時性:
 身体拘束その他の行動制限が一時的であり、解除を前提としている場合

 身体拘束実施中は、患者の身体・精神状態、転倒転落リスク、せん妄症状、活動性低下、有害事象等について継続的に評価する。また、代替手段の適応可能性を検討し、状態改善時は速やかな解除に努める。転倒転落リスクのみを理由として、漠然と身体拘束を継続しない。

身体拘束がもたらす弊害

1)身体的弊害
 関節の拘縮、筋力の低下といった身体機能の低下や褥瘡発生などの外的弊害、食欲低下、心肺機能や感染症への抵抗力低下などの内的弊害、転倒や転落などの事故を発生させる危険性がある。
2)精神的弊害
 生きる意欲の低下、不安、怒り、屈辱、あきらめなどの精神的苦痛、認知症の進行やせん妄の頻発などの精神的弊害を生じる可能性がある。また、患者家族に罪悪感や精神的負担を与えることがある。
3)社会的弊害
 職員自身の意欲低下、当院に対する社会的な不信、偏見を招く恐れがある。

身体拘束の対象となる具体的行為

 当院において身体拘束とは、ミトン型手袋、抑制着、肩・体幹・四肢抑制、4点柵、センサークリップ等を使用している状態とする。ただし、小児のサークルベッド・総柵ベッド・開放型保育器・閉鎖型保育器は、発達段階や基礎疾患に応じて使用するため、身体拘束には含まない。また、身体拘束に限らず、患者の自由な行動や活動性を過度に制限する「身体行動制限」についても必要性を検討する。

  • 1人歩きしないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  • 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  • 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
  • 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
  • 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚などをかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
  • 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
  • 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
  • 脱衣やオムツ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
  • 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッド等に体幹や四肢をひも等で縛る。
  • 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に投与する。
  • 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

「身体拘束ゼロへの手引き」(平成13年3月厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」)より抜粋

鎮静化を目的とした薬剤の適正使用について

 適正な評価の結果、不眠に対する薬剤療法が必要と判断された場合は、せん妄の惹起や離脱症状、転倒転落リスク、活動性低下等を考慮した上で実施する。また、鎮静や行動抑制を目的とした薬剤使用は必要最小限とし、漠然と継続投与しない。

身体的拘束最小化に向けた体制

1)身体拘束最小化チームの設置
 当院では認知症ケア委員会が設置する「認知症ケア委員会」が「身体拘束最小化チーム」を兼任する。
2)身体拘束最小化チームの活動内容
①身体拘束の実施状況を把握し、委員会で分析し改善策を提示する。
②身体拘束についての研修会を開催する。
③身体拘束が行われている病棟を身体拘束最小化チームによる巡回を行い、チーム員と病棟職員が協働して解除に向けた検討を行う。
④身体拘束最小化に関する職員の意識調査、研修後の理解向上を確認し更なる最小化に向けた活動を促進する。
⑤本指針の定期的な見直しを行う。
3)教育・研修
 身体拘束最小化および身体行動制限に関する理解向上を目的として、職員に対し定期的な教育・研修を実施する。研修内容には、身体的拘束の代替手段、患者の尊厳の保持の重要性、身体拘束の定義、代替手段、せん妄対応等を含む。
①定期的な研修(年2回以上)を実施する。
②その他、必要な教育・研修を実施する。

当院利用者に対する当該指針の掲示等について

 本指針は、院内に掲示するとともに、当院ホームページに掲載する。