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神経内科

医師

職名 氏名 卒業年
診療部長 田部 浩行 昭和61年卒
医 長 手塚 敏之 平成17年卒
医 師 石川 正典 平成17年卒 

(H29.4.1現在)

診療案内

診療内容について

1.神経内科とは

 神経内科はまだ一般の方々は言うに及ばず医療関係者の方々さえ十分理解されていないと思われます。そこでここでは神経内科について以下に簡単にご説明いたします。

 まず扱う病気では神経系(脳、脊髄、末梢神経、筋肉など)に器質的変化があって症状を出している患者さんすべてを扱います。精神科との違いは、精神科は主に心の病(精神分裂病、躁鬱病、神経症など)を扱うところです。脳外科は神経内科と同様に神経系に生じた病気を扱いますが神経内科との違いは、脳外科は外科系であり脳、脊髄の手術を行う病気を対象としている点が異なります。すなわち脳腫瘍、くも膜下出血、慢性硬膜下血腫、脳外傷などの疾患を扱います。しかし頭痛、脳血管障害などは神経内科、脳外科ともに扱うことも多いと思われます。

 

2. どのような症状で受診しますか

 物忘れがする、頭が痛い、めまいがする、力が入らない(麻痺がある)、手足がしびれる、感覚が鈍い、うまく歩けない、手足がふるえる、けいれんなど神経系に由来すると思われる症状のすべてです。

 

3. どのような病気がありますか

 脳や脊髄の病気としては脳梗塞、脳出血、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、髄膜炎、多発性硬化症、緊張性頭痛、片頭痛、てんかん、など、末梢神経の病気としては多発性神経炎、神経痛など、筋肉の病気としては多発性筋炎、重症筋無力症、筋ジストロフィー症など、その他として頸椎症、腰椎症などです。

 

(注意)明らかに精神的問題である場合(精神分裂病、躁鬱病、神経症など)は精神科を受診ください。

 

4.どのような検査をしますか

一般的な診察、神経学的診察が一番大切ですがMRICT・レントゲン、脳波、神経伝導速度、筋電図など神経内科に特有の検査と一般内科と同様な血液尿検査、心電図、胃カメラ、エコーなどの検査を必要に応じて行います

 

 

外来診察・入院について

 外来診察については他科と比べて何ら特別なことはなく患者さんの訴え、現病歴、家族歴、既往歴などの聴取の後に一般内科的診察と、神経学的診察を行います。そのため診察には少し時間がかかりますのでご容赦ください。特殊外来としては神経難病の患者さんの診察に対応するため神経難病外来を本年より新設いたします。

 一般外来、救急外来での診察で入院が必要だと判断したときには入院をしていただき精査加療を行います。(現在の病態、今後の経過、治療についてきちんとご説明の上、同意のある場合のみ入院となります。同意のない入院や、治療を行うことはあり得ません。外来治療においての同様です。) 当科は神経系を対象としている科であり、また当院は救命救急センターを併設していますから脳梗塞を中心とした脳血管障害をはじめとして、そのほかにも意識障害、けいれんなどの緊急症、救急疾患が多く、なおかつ重症例を対象とすることが多いようです。そのため入院経路は救急外来よりが多く8割を占めています。

 入院患者実数は平成25年で222名でした。うち残念ながらなくなられた症例は1名でした。

 当科が対象とする疾患は多くの基礎疾患が存在することや、各科横断的な疾患が多いことより内科の各分野の先生方との議論を行う必要があり、そのため症例検討会は内科との合同で週1回行っています。また、脳血管障害例については脳外科と合同で毎日検討会を行っています。そして、その他の難治例や診断に苦慮する例は、長岡地区の神経内科症例検討会に参加し議論を行っています。

 学問的活動については日本内科学会信越地方会、日本神経学会関東地方会において例年1回ずつ発表を行っています。

 また地域的活動としては上越保健所主催の難病患者さんの会への講師としての参加があげられます。

 

対象疾患について

 近年急増している心臓、血管疾患に対して、患者さんにより早く、より少ない苦痛で治癒していただき、しかも再発を最小限にくい止めるために診断、治療、社会復帰、日常生活の管理まで一貫して責任をもちます。

 診療にあたっては、すべての分野において常に全国レベル以上の内容を提供するように努力しています。しかし、決していまだ確立されていない実験的な医療を行うことなく、患者さんにとって利益があることが確実である医療のみを複数の医師によって十分に検討した上で選択しています。また、診療の内容は患者さんに充分に御説明したうえで、納得していただきながら進めて行きます。

1.     脳血管障害(脳卒中)について

 以前は「中風」「中気」などと呼ばれていました。脳血管障害は脳の血管が詰まる、破れるなどの異常が起こることで症状があらわれる病気です。かつては脳卒中の発作が起こると患者さんを動かしてはいけないなどといわれていましたが、現在の多くは急激に症状があらわれ進行するので、一刻も早く病院に運んで治療にとりかかることが大切だとされています。

脳血管障害は、大きく次のように分類されます。

脳梗塞症 脳血栓症

     脳塞栓症

     ラクナ梗塞

脳出血

くも膜下出血

【脳梗塞】

 脳血管障害の中で脳梗塞は当科が診療するものの9割をしめます。

 脳の血液の流れが途絶することが原因で、どこにどんな大きさの閉塞が、どれくらいのスピードで起きたかによって起きる脳梗塞が違い、最近ではその違いによって行われる治療法も異なります。

脳血栓症は脳の動脈が徐々に細く狭くなっていき、その結果詰まってしまうことによっておきます。60歳代以上の高齢者に多い疾患です。

 また脳塞栓症は、身体の他の部分でできた血のかたまりが血流に乗って脳に運ばれてきて、スッポンと急激に血管が詰まってしまいます。ラクナ梗塞は穿通枝と呼ばれる脳の中に向かう細い血管が詰まることによっておき、症状に特徴があります。

〔原因〕

 脳血栓症、ラクナ梗塞の多くは動脈硬化によって引き起こされます。

 動脈硬化の危険因子としては、高血圧、高脂血症・糖尿病、肥満、心臓疾患、タバコなどがあげられます。脳塞栓症は、そのほとんどが心房細動などの不整脈、心筋梗塞や心臓弁膜症などの心疾患が原因となります。

〔症状〕

 症状が数時問から数日にわたって徐々にあらわれ、進行するのが脳血栓症の特徴です。

 脳塞栓症は突然発症し、一般に脳血栓症よりも重症になります。約3割に梗塞のあとに脳内出血がみられ、これを出血性梗塞といいます。いずれも脳のどの動脈がどこで詰まるかで、症状が異なってきます。たとえば、脳の左中大脳動脈が詰まると、右側半身のしびれや麻痺、言葉が理解できない、しゃべれない(失語症)などの症状があらわれてきます。

 脳の右半球の中大脳動脈だと左側半身のしびれや麻痺が起きます。同じ脳の左半球でも、後大脳動脈というところが詰まると後頭葉は運動に関係のないところなので、身体の麻痺はありませんが反対側の視野ものが見えなくなるという障害があらわれます。

 そのほかに詰まる血管によって認知症、意識障害、めまいなど、多様な症状があらわれる可能性があります。

脳血栓症やラクナ梗塞は夜間や早朝に発病しやすいのが特徴です。

〔診断と治療〕

 現在ある症状、家族の方への問診、持病の有無などで、おおよその見当がつけられます。神経学的診察ののち、確定診断と脳のどの部分に梗塞があるかをくわしくみるために、CTMRIが行われます。しかし、多くは梗塞が起きてから一日は脳CTに病巣が映し出されないので繰り返し撮影することがあります。

 脳梗塞の治療は、1.全身状態の管理を行う、2.脳浮腫があればとる(グリセオールやマニトールなど)、3.血液がかたまるのを防ぐ(ヘパリン、オザグレル、アルガトロバン、アスピリン、ウロキナーゼなど)、4.血液の流れをよくする(低分子デキストラン)、5.梗塞の再発を防ぐ目的で治療が行われます。(正格には病型によって治療法が違いますし、患者さんによっても治療法は異なります)再発予防のためには血小板凝集阻止薬(アスピリン、チクロピジンなど)の内服や危険因子といわれている疾患、生活環境をコントロールする。脳塞栓症で、まだ心臓内に血栓が残っている可能性のあるときには、抗凝血薬(ワーファリン)などを用います。

 とくに多発性脳梗塞と呼ばれる脳梗塞をくり返すものでは、認知症をはじめとして、さまざまな症状を引き起こすことが多いので再発の予防が大切です。

 

2.      変性疾患について

 徐々に神経細胞が変性(なくなる)病気で変性する神経細胞の違いによって示す症状が違います。原因不明のものが多く根本的な治療法が残念ながらありません。

 

【アルツハイマー病】

 アルツハイマー病の患者さんの大脳には、広範囲にわたって萎縮がみられます。原因はまだわかっていませんが、ある種のたんぱく質が脳に沈着して神経細胞の変性を促すのではないかと考えられています。

通常は初老期から発病しますが、なかには若年性、家族性のものもあり40歳より若年での発症もみられます。

〔症状〕

 多くは、記憶障害から症状が始まります。たとえば徐々に計算ができなくなったり、今日が何月何日かわからない、外出すると家に帰れない、財布などをしまった場所がわからなくなるなどといった健忘症状があらわれます。さらに病気が進むと徘徊、幻覚、妄想、失禁などがあらわれます。

ピック病と異なり、アルツハイマー病では人との対応における礼節、人格はかなり長い間、保たれるのが特徴です。

 認知症は徐々に進行し、5年ほどで寝たきりとなることが多いようです。

〔診断と治療〕

 診断は、認知症を起こす他の病気との鑑別にポイントがおかれます。CTMRIで脳萎縮の存在を確認し、また脳梗塞などの他の病気がないことも確認する。脳血流の検査としてSPECTも行われます。

治療としての根本療法は残念ながら無いのですが、症状を軽くするものとしてドネペジルなどが最近用いられるようになりました。うつ症状などを伴う患者さんについては抗うつ剤や抗不安薬なども用いられます。

〔介護家族の対応〕

 アルツハイマー病には介護は不可欠です。家庭で患者さんをみるのは大変ですが、患者さんにさまざまな刺激を与えることで病状の進行が抑えられることがあります。たとえば、新聞や本を読ませたり、話をしたり、外出させたりしてあげましょう。一般に在宅介護には、患者さんと出来るだけ多くコミュニケーションをはかる。孤独にさせない、寝込ませない。規則正しい生活をさせる。最低限の自分のことは自分でさせるようにする。心身の健康な部分のはたらきを維持させるなどの点に気をつけてください。

 

【パーキンソン病】

 わが国での患者数が10万人以上といわれるパーキンソン病は、40歳から70歳に好発します。通常は非遺伝性の病気です。なかには40歳以前に発症する若年性のものもあり、この場合は原因として遺伝も考えられています。

 変性疾患のなかでは、比較的研究が進んでいる病気です。中脳にある「黒質」という場所の神経細胞が変性することによって起きると考えられています。しかしなぜ黒質の神経細胞が変性するのかはわかっていません。黒質の神経細胞はドーパミンという物質を神経伝達物質として、線条体という所に送っていますがパーキンソン病になると、このドーパミンが不足してしまうために神経間の情報伝達がうまくいかなくなって、手足に運動障害などがあらわれてくるといわれています。

〔症状〕

 おもな症状は筋肉のこわばり(筋固縮)、震え(安静時振戦)、無動症、姿勢反射障害(姿勢・平衡感覚の悪さ)があります。

 具体的には、立つ姿勢が前かがみになる、すり足で歩く小刻み歩行、歩く時に手を振らない、歩き始めにすぐ足が踏み出せない(すくみ足現象)がある、立っているときに軽く押されるだけで前や後ろ、横に倒れそうになる、安静時に手が震える、手首を曲げられてもスムーズに曲がらない、などの症状があらわれます。

 また、表情が乏しくなる(仮面様顔望)、声が小さくなる、便秘、障害物や階段があるほうが、普通に歩くより歩きやすい、動作が緩慢になる、などもみられます。

 一般的に左右どちらかの手足の振戦から症状が始まることが多く、ゆっくりと進行します。経過が10年を過ぎると薬剤でのコントロールも難しくなってきます。

〔診断と治療〕

 特徴のある症状の発現でおおよその見当はつけられます。大切なのは、パーキンソン症候群との鑑別です(そのためにCTMRIなどがおこなわれます)。

 治療には、不足しているドーパミンを補う目的でL-ドーパという薬を内服します。その他、アマンタジンやドーパミン受容体作動薬など、いくつかの薬を組み合わせて用いる多剤併用療法が行われ、症状を緩和したりできます。これらの薬も根本療法ではないため薬はのみ続ける必要があります。ただ、これらの薬剤は幻覚や吐き気、不随意運動などの副作用があるので注意が必要です。

 徐々に、薬の効いている時問が短くなってくるウエアリングオフ現象、症状が突然よくなったり悪くなったりするオンオフ現象が起きてきます。朝食と昼食にたんぱく質を控え、夕食に必要量をまとめて摂る。という食事療法で症状が改善されることもあります。

 手足の振戦や筋固縮がひどい場合は、脳の一部を外科手術で壊したり、電気刺激を加えたりして振戦や筋固縮をとる療法が行われることもありますが、これも根治療法ではありません(この治療法は当院では行うことができません)。

〔家族の対応〕

 患者さんは闘病に疲れて(病気自体でうつ状態になりやすいという説もある)、うつ傾向になりがちですから、家族の温かい励ましが不可欠になります。

 経過の長いパーキンソン病は誤飲(飲み物や食べ物が食道に入らず、気管支に入ってしまう)ことによる肺炎や、転倒による骨折、床ずれなどの病気を起こしやすくなっていますので注意が必要です。

 また、急に薬の服用を中止すると高熱や意識障害、激しい筋固縮など(悪性症候群)を起こす危険があるので、医師に相談なく勝手に薬をやめることは控えてください。

 パーキンソン病にかかっても、現在では一般の人と同じくらいの寿命まで過ごせるケースが増えています。患者さん家族全員が希望をもって、病気に立ち向かっていきましょう。

【筋萎縮性側索硬化症(ALS

 筋萎縮性側索硬化症は運動ニューロン病とも呼ばれます。私たちは手足を動かそうとするとき、筋肉を収縮させる信号を脳から運動神経を経て筋肉に送っているのですが、この病気では運動神経細胞の運動ニューロンが侵され、なくなっていくため信号が伝わらなくなり、筋肉が収縮できなくなっていきます。そのため、筋肉が動かされることがなくなって萎縮し、筋力が低下していきます。中年以降に発症し通常は非遺伝性(一部で家族性のものもあり、家族性のものの中で原因が分かっているものもあるのですが)でその原因は不明です。

〔症状〕

 最初は手の指の筋肉の萎縮から始まり、指先に力が入らなくなってきます。舌の萎縮があらわれて、ものがしゃべりづらいこともあります。その後、四肢の筋肉や舌がピクピクする筋線維束れん縮という特徴的な症状が起こってきます。徐々に筋肉の萎縮は全身に広がって、嚥下障害、構音障害などがあらわれ、寝たきりになって、呼吸困難も起こります。

〔治療〕

 残念ながら根治療法はありません。しかし最近病勢の進行を抑制するといわれるリルゾールが本邦でも使用できるようになりました。その他として症状をやわらげる対症療法が行われます。

〔家族の対応〕

 筋萎縮性側索硬化症では運動ニューロンだけが侵されるので、知能にも知覚にも異常はあらわれません。ですから一般的に認知症も来さず、意識も清明ですべての感覚が正常に働いています。運動ニューロン病は呼吸器などを侵します(筋力低下のため)が、膀胱・直腸には障害がみられず眼球の運動も普通です。不思議なことに床ずれが出来ないのも特微といわれています。

 患者さんは身体が動かせないだけなので、余計につらく感じることも多いと考えられますので、家族はできるかぎり症状をやわらげるように工夫してあげる必要があると思います。言葉が不白由になってくるので、コミュションのとり方の工夫(文字盤やコンピューターなど)も必要になります。

 

3.      脱髄性疾患について

 神経細胞から出た情報は電気的な信号に姿を変えて、「軸索」という通り道を通って隣接する神経細胞に次々に伝わっていきます。軸索は「髄鞘」というカバーによって保護されているですが、このカバー(家庭にある電線のビニールの部分にあたる)がなんらかの原因で壊されてしまうのが脱髄疾患です。代表的な疾患は多発性硬化症です。

 

【多発性硬化症】

 20~40歳代の、比較的若い年代に好発します。ヨーロッパやカナダなど、緯度の高い地域で患者数が多く、わが国では10万人に5人程度の発症率です。

 「多発性」といわれるのは、よくなったり悪くなったりする(時間的多発)、身体のあちこちに症状が出る(空間的多発)をあらわします。

 原因は解明されていませんが、自己免疫疾患の一つと考えられています。さらにそこにはウイルス感染がなんらかの形で関与しているのではないかといわれています。

〔症状〕

 症状は急にあらわれます。脱髄の好発部位が視神経と脳幹、小脳、脊髄なので、片目、あるいは両目の視力障害がもっとも多く、目が見えなくなる、複視(ものがだぶってみえる)、しびれる、うまく歩けない(運動失調)、うまくしゃべれない(構音障害)などがみられます。

〔診断と治療〕

 急に目がみえなくなったりするので眼科に行かれてその後、眼科より神経内科に紹介される人が多いのですが、多発性硬化症による視力の異常は視神経炎という障害であり、視神経炎と診断がつけば多発性硬化症の部分症状として神経内科での治療に入ります。まず神経学的診察を行い、他の神経系の病気ではないという除外診断を行います。腰椎穿刺、CTMRIで病変部や脳の状態をみます。この疾患では脱髄巣が確認できますが、時に脳の萎縮や脳室の拡大がみられます。

 急性期には、遅れると視力低下や失明の危険性もあるので速やかに治療にあたります。ステロイド(副腎皮質ホルモン)を投与し、それであまり改善がみられない場合は免疫抑制剤(アザチオプリン、サイクロスポリン、ミゾリビンなど)を用います。さらに効果がみられないときは血漿交換が行われます。この3つの治療法で壊れた髄鞘を修復する手助けをするのです。症状の軽重には個人差があって再発もなくおさまっていく例もあります。

 しかし患者さんの多くは、完全に治癒しない絶望感や仕事に戻れない苛立ち、将来に対する不安などから、うつ状態に陥ることもあり、また逆に躁状態になる人もいます(治療のためのステロイドの影響もある)。これらの場合は必要に応じて、抗うつ剤や精神安定剤を投与することもあります。

 再発を防ぐには、体調を崩さないようにすることが一番です。過労、かぜ、睡眠不足、ストレスなどを避け寛解の維持につとめましょう。日本でも再発抑制にインターフェロンやフィンゴリモド塩酸塩などが用いられるようになりました。

 

4.      末梢神経疾患について

【ギランバレー症候群】

 ギランバレー症候群は小児から高齢者まで男女を問わず起こる疾患でおもに運動麻痺を主訴とする末梢神経障害(多発性ニューロパチー)です。

 一般にウイルス(サイトメガロウイルスなど)や細薗(キャンピロバクターなど)などによる感染症(かぜ、下痢など)のあとに起ります。原因はまだ不明ですが神経根に障害が起きていて、そこにはアレルギー反応がかかわっていると考えられています。

〔症状〕

 先行感染の1~2週間のちに力が入らない、しびれるなどの症状が出てきます。これらの症状は徐々に広がり、上半身におよび呼吸筋まで侵されて呼吸困難に陥ることもあります。また顔面神経にまで広がり嚥下障害や構音障害、眼筋麻庫が起こることもあります。

 手足の運動麻痒は4週間以内に進行がとまり、その後は徐々に回復してきます。顔面神経の症状はそれより回復が速く、数日から2週間くらいでおさまります。

〔診断と治療〕

 先行感染について問診したあと、麻痺が左右対称にあらわれていること、腱反射が低下ないし消失していることを確認し、腰椎穿刺をして髄液を調べます。この病気であれば腰椎穿刺で特微的な所見である蛋白細胞解離がみられます。

 この疾患の多くは自然経過をたどって治まることがほとんどです。診断がついたら安静を保って、肺炎などの合併症を起こさないように気をつけます。

 しかし、呼吸筋に麻痺があらわれて呼吸困難になった場合や運動麻痺が重症になった例では、早期に症状を抑える必要があり、この場合は血漿交換や免疫グロブリンの点滴を行い、必要に応じてリハビリテーションを行います。しかし後遺症が残ることもあるので注意が必要です。再発率は10パーセント以下といわれていますので余り心配することはないと思います。

 

5.      筋疾患について

【重症筋無力症】

 筋肉が疲れやすく、日常のちょっとした動作が続けてできなくなる(易疲労性)病気です。また一日のうちで夕方にかけて症状が強くなる(日内変動)ことが多いです。この易疲労性と日内変動が重症筋無力症の特微です。神経と筋肉の接合部では神経の情報がアセチルコリンという物質に姿を変えて筋肉に伝えられています。筋肉のほうにはアセチルコリンを受けとるためのアセチルコリン受容体という部分があるのですが、重症筋無力症になるとこの受容体に障害が起こり、神経の情報が伝わりにくくなるのです。自己免疫疾患の一つであると考えられアセチルコリン受容体に対する抗体が産生されるため(なぜ抗体が産生されるかはわかっていない)とされています。

〔症状〕

 まぶたが垂れ下がる、ものがだぶって見える(複視)が代表的な症状で、そのほか食べ物をかむときに疲れる、ものを飲み込みにくい、鼻声になる、腕を上に上げるだけで疲れるなどの訴えがあります。これらは同じ動作をくり返すと悪化し、安静にすると改善されます。症状は朝よりも夕方に向かってだんだん強くなっていきます。

まぶたや目だけの症状のものを1型、嚥下障害や手足の筋力の低下があらわれたものを2型といいます。

〔診断と治療〕

 血液検査でアセチルコリン受容体に対する抗体の有無を調べます。またテンシロンテスト、反復刺激試験、筋電図、胸部レントゲン写真、胸部CTなどをとって確定診断を行います。胸腺というのは、胸のちょうど前面の真ん中にある内分泌器官で、普通は思春期を過ぎると退化するものです。しかし重症筋無力症の患者さんではこれが退化せず、そのまま残っていたり、あるいは増殖したり腫瘍化したりしています。そのため胸腺に対する検査が必要です。

 治療は、まずこの胸腺(胸腺腫)を摘出します。とくに2型では必ず摘出が行われます。

 その後、抗コリンエステラーゼ剤、ステロイド剤の薬物療法を行います。これで効果がみられない場合は、血漿交換療法を行います。寛解状態が保てたら薬物療法だけで社会復帰も十分可能です。しかしかぜなどの感染症やストレス、睡眠不足、過労などで症状が悪化することが多いので、十分注意しましょう。

【多発性筋炎】

 多発性筋炎は自己免疫疾患の一種です。膠原病や悪性腫瘍を合併することが多く、とくに皮膚症状を伴う皮膚筋炎ではその危険性が高くなります。

〔症状〕

 体幹と手足の体幹に近い大きな筋肉が障害されて力が入らなくなります。歩きにくい、腕が上がらないなどの訴えがあり、発熱、関節痛、筋肉痛を伴うこともあります。嚥下障害や枕から頭を上げにくいなどの症状もみられることがあります。

 皮膚症状を伴う場合は、紅斑が全身にあらわれます。なかでも上まぶたのはれと紅斑(ヘリオトロープ疹)、手の指の関節の紅斑(ゴットロン徴候)が特微です。

〔診断と治療〕

 血液検査で筋肉が破壊されたときに出るCPKなどの酵素の増加の有無を診ます。また、筋電図、筋生検を行います。

 治療にはステロイドホルモンを投与します。ステロイドで効果があがらない場合は免疫抑制剤も投与します。

 この疾患は発症してから半年以内に治療を始めないとあまり効果は期待できなくなるので早期治療が不可欠です。数カ月である程度症状は軽減されますが寛解までには2~5年はかかります。再発することもあるので、日常生活には注意が必要です。

 また、膠原病を合併することも多いために膠原病の専門医や皮膚科の専門医とも連絡をとりあって治療にあたることになります。

 

6.    機能的疾患について

 さまざまな疾患から頭痛が起こります。慢性的に頭痛を抱えている人でも一度は専門医に調べてもらい、原因疾患のないことを確認しておくことが大切です。そのうちで代表的な3つの疾患について説明します。

【片頭痛】

 片頭痛は血管性の頭痛です。なにかの誘因があって脳血管にけいれんが起こり、その後収縮が起こって脳の虚血が生じ前兆が表れます。その後血管が拡張することによって頭痛が出現するといわれています。10~20歳代で発症し女性に多い頭痛です。また、家族のなかに片頭痛もちの人がいることが多いのも特微です。

片頭痛といっても頭の片側だけが痛むのではなく、痛む場所はあちこち移動することがあります。

〔症状〕

 古典型片頭痛といわれる前兆のあるタイプでは、頭痛の前に目の前がピカピカしたり、目がみえにくくなったり、からだの片側がしびれたり感覚が鈍くなったりするという症状がみられます。前兆は数秒から数分、最長で1時間ほど続きます。

 しかし殆どは、前兆がなく突然頭痛が起こる普通型片頭痛です。脈拍に合ったズキンズキンという拍動性の頭痛で、頭の片側だけでなく全体が痛む場合もあります。また、吐き気や嘔吐、悪心を伴うこともあります。

 頭痛は4、5時間でおさまるものや1~2日と続く人もいます。またこの頭痛は一生続くのでは無く、ある年齢になると自然に軽快消失するようです。その年齢は人により違うのです。

〔診断と治療〕

 心配のない頭痛かどうかは多くは問診でわかることが多いです。必要な場合はCTMRIなどで頭痛の原因となる疾患がないことを確認し薬物療法を行います。

 片頭痛の発作が起きたあとには、血管を収縮させる薬を用います(エルゴタミン製剤、トリプタン製剤)。

 発作予防としては、血管のけいれんを防ぐために血管を拡張させる薬を服用します。

 しかし副作用もあるので、あまり長期間の服用は勧められません。

【群発頭痛】

 片頭痛が女性に多いのに対して、群発頭痛は20歳以上の男性に多くみられます。片頭痛と同じように血管性の頭痛で起こり方も同じではないかとされていますが、詳しくはわかっていません。

 前兆はなく、突然片側の眼窩を中心にえぐられるような激しい頭痛が起きます。この頭痛は15分から3時間時間ほど続き、この発作が2~6週間くらいくり返されます。連日のように起こることもあります。就寝後、1~2時間してから起こることが多いようです。このほかに頭痛の起きている側の目が充血する、涙が出る、鼻がつまる、鼻汁が出るなどの症状を伴います。

 この頭痛発作がおさまると、数カ月から数年、再発がみられず忘れたころにまた起こるのも群発頭痛の特微です。

〔診断と治療〕

 片頭痛と同じ薬剤を用います。発作時には酸素吸入が効果があります。

【筋緊張性頭痛】

 片頭痛が血管性の頭痛なのに対して、筋緊張性頭痛は、顔面や頭部、頸部などの筋肉の過度な緊張が原因で起こる頭痛です。

 年齢に関係なく起こりますが、平均年齢は30歳くらいです。なぜ筋肉が必要以上に緊張を続けるのかはわかっていませんが仕事その人の姿勢、精神的な誘因も見逃せません。

〔症状〕

 筋緊張性の頭痛は押さえつけられるよう、締めつけられるよう、鈍くしつこい痛み、なにかかぶったような感じ、などと表現されることが多いようです。非拍動性で、後頭部や頂部に起こりやすく、嘔吐や悪心は伴わないのが普通です。頸のコリ、肩のコリを自覚する人も少なくありません。
 発作は朝よりも午後から夕方にかけて多く起こり、数時間から1週間近く続くものまでさまざまです。

〔診断と治療〕

 片頭痛の際と同じように、鑑別診断が行われます。筋緊張性頭痛の場合は、さらに頸椎のレントゲン撮影で頸椎症でないことや眼科診察で緑内障や屈折異常(乱視、老眼がないこと)を確認します。

 薬剤療法を行いますが、鎮痛剤とともに、筋弛緩剤を用いることもあります。

 なかには片頭痛の特徴も併せもった混合性頭痛のこともあります。混合性の場合は薬をいろいろ試してみてもっとも効果のあるものを服用します。

 どんな薬を服用しても効果がない場合は、心因性の頭痛を疑います。これは不安やうつなどの心の状態がもとになって起こる頭痛です。この場合は、精神安定剤や抗不安薬の服用、精神神経科の治療も併せて行います。

慢性頭痛を防ぐ生活

 慢性頭痛の誘因にはいろいろなものがあります。発作をくり返すうちに、なにが自分の頭痛を引き起こしているかわかるようになると思いますので、それらを遠ざけておくことが予防の第一歩です。さらに過労を避け、ストレスをため込まないことも必要です。睡眠を十分にとり、入浴やマッサージなどで、身体と心の緊張をときほぐす工夫をしてください。また、合わないメガネや歯の不調なども原因になることがありますので発作が続く場合は一度チェックしておきましょう。

参考文献

水野美邦編:標準神経病学

金沢章:神経内科のお医者さん

亀山正邦、高倉公朋編:今日の神経疾患治療指針

多賀須幸男、尾形悦郎編:今日の治療指針

 


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