内視鏡センター

上越地域の内視鏡診療の向上を目的に2015年9月に新潟県立中央病院内視鏡センターは開設されました。内視鏡検査は食道、胃、大腸といった消化管、膵・胆道や肺の病気の診断治療にはなくてはならない検査です。胃がん、大腸がんや肺がんの2次精密検査として内視鏡検査、3次救急医療機関としての緊急内視鏡や地域がん診療連携拠点病院として消化器癌の高度先端内視鏡治療を推進しています。当センターでは消化器内科、消化器外科、総合診療科、呼吸器内科など多数の医師で内視鏡診療にあたっています。また患者の皆様から安心して受診してもらえるようアメニティーとプライバシーの確保に配慮した構造となっており、そして検査前後の安全確認、検査中のモニタリングなど常に安全な内視鏡検査・治療を心がけています。

施設案内

受診方法

当院の内科や外科外来を紹介状等持参のうえ、まず受診してください。その後に内視鏡検査の予約をし、当センターで内視鏡検査を行います。

検査・治療

上部消化管内視鏡、下部消化管内視鏡、大腸粘膜切除術、大腸ポリペクトミー、食道粘膜下層剥離術、胃粘膜下層剥離術、大腸粘膜下層剥離術、小腸内視鏡、カプセル内視鏡、内視鏡的胆管結石除去術、内視鏡的胆管ステント留置術、超音波内視鏡検査、超音波内視鏡下穿刺吸引法、超音波内視鏡下ろう孔形成術、気管支内視鏡、気管支腔内超音波断層法など

認定施設

日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会、日本呼吸器内視鏡学会、日本肝臓病学会など

施設概要

施設概要面積:596㎡
(建物:一部2階建1,305㎡、PET/CT検査室等を含む)
主な設備内視鏡室5室
内視鏡透視室(Cアーム型X線TVシステム設置)2室
記録室(カンファレンス・研修用)1室
リカバリーエリア5ブース

内視鏡センター入口

内視鏡カメラ待合室

大腸カメラ待合室

内視鏡検査室

トイレ

洗面台

記録室(カンファレンスルーム)

年間検査・治療件数

2020年2021年2022年2023年
上部消化管内視鏡検査4,3634,6473,8843,726
食道・胃内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)15310610785
大腸内視鏡検査1,9221,9131,8922,015
大腸内視鏡的粘膜切除術(EMR)332319608651
大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)54544363
内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)308244536441
超音波内視鏡検査(EUS)145111178338
超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)66494981
超音波内視鏡下ろう孔形成術(EUS-TD)2443
カプセル内視鏡620912
気管支鏡検査215220208227

上部消化管(食道・胃)内視鏡検査・治療内視鏡

内視鏡室(5ブース)

最近増加している逆流性食道炎の診断や胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの良性の病気だけではなく、食道癌や胃癌などの悪性腫瘍の早期発見・早期治療に積極的に取り組んでいます。上部消化管内視鏡の年間件数は内視鏡センターとなり検査室が増加したことから、より多くの検査を行うことが可能になっています。また内視鏡センターのオープンに合わせて最新の内視鏡機器を整備し、より詳細な内視鏡診断が可能となりました。早期癌の病変範囲や深達度を診断するための拡大内視鏡やNBI観察、特殊染色観察を行うことによって、正確な診断・治療につなげています。さらに当センターの検査室はゆったりとした完全個室でプライバシーが保たれており、またリカバリーベッドも常設されていることから、希望される方には苦痛のない鎮静下での内視鏡も行うことができます。

当センターでは、高度な治療として消化管腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を2005年から導入しており、高い治療成績が得られています。最近では食道・胃癌を合わせて年間計150件余りのESDを行っており、延べ件数は1,500件を超えています。今後も、体に負担の少ない低侵襲性の内視鏡治療を安全かつ確実に提供できるように、内視鏡医、看護師とともに研鑽を積みチーム医療を展開していく予定です。

早期食道癌に対するESD

上部消化管出血に対する緊急内視鏡

吐血や黒色便があった場合、食道、胃や十二指腸といった上部消化管からの出血が疑われます。そのため緊急で上部消化管内視鏡検査を行い、出血部位を確認し出血原因を診断し、止血処置を行います。胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの出血に対する止血処置の方法としては、内視鏡から止血鉗子と呼ばれる特殊な器具を出し、この鉗子で出血部位をつかみ、高周波電流を流して組織を焼灼する事で止血する方法が一般的です。その他に出血している血管をクリップで挟む方法や、薬液を出血部位に注入する方法もあります。潰瘍からの出血以外に、食道静脈瘤(肝硬変等の原因により異常に太く発達した静脈)が破裂した場合にも、内視鏡による止血を行います。この場合、破裂して出血している静脈瘤をゴム製リングで縛る事で血流を遮断し止血します(食道静脈瘤結紮術)。
上部消化管からの出血を止める事が出来なければ当然命に係わる事になるため、これらの処置は迅速かつ確実に行う必要があります。止血処置は当センターにとって非常に重要な治療内視鏡の一つです。

大腸消化管内視鏡検査・治療内視鏡

大腸がんや炎症性腸疾患などの大腸疾患が増加傾向にある現状を踏まえ、大腸内視鏡検査も積極的に行っています。下剤による前処置には、専任スタッフが常駐していますので、高齢者や初めて検査を受けられる方でも安心して洗腸いただいています。またトイレを7ブース(障害者専用を含む)新設致しましたので、ゆとりをもって前処置が可能となりました。希望者には自宅での前処置も行っています。
大腸治療内視鏡に関しては小さなポリープに対するコールドポリペクトミー(CP)や内視鏡的粘膜切除術 (EMR)、2cmを越える大型病変に対する内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) などを行っています。小さなポリープであれば、検査の際にCPやEMRを用いて基本的には外来治療を行っております。2cmを越える大型病変でも、適応があれば入院の上ESDを行っています。

カプセル内視鏡・小腸内視鏡検査

小腸は非常に長い管腔臓器で疾患の頻度も少なく、従来は内視鏡診断・治療は困難とされてきました。近年カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡の開発により小腸の検査が可能となりました。当院でも2012年よりカプセル内視鏡を導入し、小腸疾患の内視鏡検査が対応可能となっています。

内視鏡的逆行性膵胆管造影

内視鏡透視室

内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)は特殊な内視鏡(後方斜視鏡)を用い、胆汁および膵液が十二指腸に排出される際の出口となる十二指腸乳頭(主乳頭:ファーター乳頭、あるいは副乳頭)の開口部から細いチューブ(造影カニューレ)を挿入し、胆管および膵管に造影剤を注入してX線撮影を行う検査です。近年はMRI(MRCP)を始めとした各種画像検査の進歩により造影検査のみを行う機会は少なくなっていますが、管腔内超音波検査(IDUS)、病理検査のための検体採取(組織診、細胞診)、経口胆管鏡(POCS)、経口膵管鏡(POPS)など、直接胆管・膵管に道具を入れる診断的ERCPや、総胆管結石の截石、胆管炎・胆嚢炎に対するドレナージ、膵癌、胆道癌などの悪性腫瘍による胆道閉塞に対する減黄術(ステント留置)などの治療的ERCPが増えています。特に当院では、総胆管結石・急性胆管炎に対する緊急の治療的ERCPが多いのが特徴です。通常の上部消化管内視鏡検査と比べると、検査時間が長く(30分~1時間以上かかることもあります)、使用する内視鏡も太いことから当院ではミダゾラム、ペンタゾシンなどの鎮静・鎮痛剤を使用し、苦痛が少なくなるようにしています。

またERCPは内視鏡検査・治療のなかでは偶発症の多い内視鏡手技であり、特にERCP後膵炎は重症化すると生命に関わることもあります。このため、全例入院のうえで検査施行し、膵炎予防の薬剤を投与し十分な経過観察をするなど、安心して検査を受けていただけるように取り組んでいます。

総胆管結石に対する内視鏡的載石術

膵癌による閉塞性黄疸に対する胆管金属ステント留置術

超音波内視鏡検査

超音波内視鏡検査(EUS)は内視鏡下に超音波を用いて消化管あるいは消化管に近接した臓器を描出する画像検査です。通常の内視鏡に細径プローブを挿入する方法と、内視鏡の先端に小さな探触子(超音波プローブ)が付いた専用機を用いる方法があり、対象とする臓器・疾患により検査方法を選択しています。一般的に超音波検査は対象物と探触子が近いほどより精細な画像が得られると考えられており、EUSは経腹的超音波検査(いわゆる腹部エコー検査)よりも詳細な検査が可能となるため、膵・胆道疾患や消化管粘膜下腫瘍の質的診断として重要な検査となっています。

EUSは外来で検査可能ですが、上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)と比べると、検査時間が長く(30分~1時間以上かかることもあります)、使用する内視鏡も太いことから、当院ではミダゾラム、ペンタゾシンなどの鎮静・鎮痛剤を使用し、苦痛が少なくなるようにしています。

また近年EUSで病変を描出し特殊な穿刺針を用いて組織・細胞を採取する超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)を行うことが可能となり、膵臓、腹腔内・縦隔リンパ節などそれまでは困難であった臓器からも安全に検体採取が可能となり、腫瘍の良悪性の鑑別に重要な役割を果たしています(EUS-FNAは入院での検査となります)。さらに、EUS-FNAを応用した超音波内視鏡下ろう孔形成術も積極的に行っており、膵仮性嚢胞ドレナージ(EUS-CD)、胆管ドレナージ(EUS-BD、EUS-CDS、EUS-HGS)などを施行しています。

膵腫瘍に対するEUS-FNA

および得られた中分化型管状腺癌

気管支鏡検査

気管支鏡とは、先端にカメラが付いた直径4〜6mmほどの細い内視鏡で、薬剤噴霧による喉の麻酔と注射による静脈麻酔の後に、口(もしくは鼻)から空気の通り道に沿って挿入し、気管や気管支の中を観察するとともに、主に肺腫瘍や間質性肺炎などの診断のために気管支や肺から組織や細胞を採取するために用いられます。当センターは日本呼吸器内視鏡学会認定施設であり、2名の気管支鏡指導医を含めたスタッフにより年間250件以上の検査を行っており、通常の観察や検体採取に加え、超音波気管支鏡を用いた生検や、異物除去、気管支充塡材を用いた気管支充塡術などの内視鏡治療も行っています。

超音波気管支鏡(Endobronchial ultrasound:EBUS)には、先端に超音波プローベが装着された専用の内視鏡で気管支近傍のリンパ節を描出しながら穿刺、生検を行う EBUS-TBNA (Endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration) と、通常の気管支鏡を用いてガイドシースと呼ばれる細い筒を病巣部へ挿入し、シース内に超音波プローベを挿入し、超音波画像にてシースの先端が確実に病巣部にあることを確認してから専用鉗子をシースに挿入して生検を行うEBUS-GS (Endobronchial ultrasound using a guide-sheath) があります。前者は肺がんのリンパ節転移、サルコイドーシス、悪性リンパ腫の診断のために、後者は主に肺がんの診断に用いられ、いずれの方法も従来の方法に比して確実に病巣部より検体を採取することができるため、診断率の向上に寄与しています。

気管支鏡検査室

EBUS-TBNA